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Image by Erzsébet Vehofsics
あとがき

神招きの庭、無事完結しました。

読んでくださったみなさま、どうもありがとうございました。

どこまで続けられるかわからないまま始まったこのシリーズをきちんと書き切れたのは、間違いなくお手にとってくださったみなさまのおかげです。深く感謝します。

 

本の最後にあとがきを入れるか迷ったのですが、結局入れませんでした。

その代わりというかなんというか、以下で、わたしがどういうふうに考えてこの話を書いたのかをざっくり簡単に語ってます。そういうものがお好きな方は、覗いていただけるとさいわいです。(9巻読了後推奨です)

  

 

 

 

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神招きの庭は、わたしの書きたい、わたしなりの○○というものを詰めこんだ作品でした。

○○にはいろいろなものが入ります。和風ファンタジー、夫婦、後宮、女ヒーロー、かっこいい女性、女性同士の友情、女性主体の組織、バディと恋人の両立、神と人、などなど。

どれにもちゃんと、今のわたしなりの描き方ができたんじゃないかなと満足しています。

そしてこの話は、天災と戦う人々の話でもありました。ですのでどの登場人物にも懸命に、ベストを尽くしてもらいました。そのうえで、いかんともしがたい現実に苦しんでもらいました。

(余談ですが、常にできうる限りの最善手を取りつつもうまくいかない、という話運びはとても書くのが難しく、わたしも苦しみました)

でも、だからこそ、最後は絶対に大団円で終わらせようと決めていました。天災や理不尽に苦しめられようとも、いつかは、最後には、人々の知恵や思いがその苦難を乗り越える、乗り越えてほしい、そういう祈りのようなものを籠めて話を結びました。

すこしでも感じていただければ嬉しいです。

この話の登場人物は、主役からちょい役や敵キャラまで、ここで語るのを躊躇してしまうくらいみんな気に入っています。気に入っているというか、途中からわたしがいろいろ考えずとも『そういう人』として動いてくれて、わたしは端から好ましい人々を眺めているような、そんな気分になることがありました。

わたしはけっこうプロットをがちがちに固めてから書き始めるタイプなのですが、そうはいっても大事なところは結局、プロットにはさらっとしか書いてなかったり、ときにはまったく書いてなかったりする細やかなキャラクターの思いや考えが、推進力や繋ぎとなって物語を進めていくもので、その細やかな感情を、作者がうんうん悩まずともぶれずにするりと書けるようになるのが、キャラが立つということなのかなあと今は思います。

シリーズ後半は、すくなくともわたしからはほとんど全員のキャラクターが立って見えました。なんというか、神招きの世界が、すごく立体的に見えたというか。

そして今思えば、この話ではじめに『キャラ立ち』の感覚を持たせてくれたのは、やはり主人公である綾芽でした。1巻の最後で、綾芽が二藍にした約束。あれは実は、プロット上にはまったく存在していませんでした。号令神をめぐる戦いとなることははじめから決まっていたものの、その時点のわたしは、その号令神のシステムに神ゆらぎを噛ませるつもりも、二藍のありようを争点にするつもりも全然ありませんでした。

それでも綾芽はああいう約束をして、ご存じのとおり、シリーズとおしてその約束を果たそうと奔走することになりました。あれは結局、綾芽という人物の中から自然と出てきた望みだったんだなと思ってます。

最初から最後まで、綾芽が引っ張ってくれたシリーズでした。

宵マチ先生の美しいイラストにも、たいへん影響を受けました。どの巻のイラストも大好きで、とくに3巻の、平安風装束をまとって太刀を振りかざし、二藍を守ろうとしている綾芽には本当にはっとさせられました。わたしが書いてる主人公は、こういう子なんだと再確認させられたというか。

あと7巻のイラストがすごく好きです。美しいです。

コミカライズも嬉しかった。わたしはコミカライズ版の佐智、須佐、那緒がすんごく好きです。

9巻でのオチを含めた大まかな流れは、3巻を書いているときには決まっていました。

思いついた展開をほぼ入れ込めたのは、それだけ長く書かせてもらったからで、それだけ長く書けたのは、読んでくださった方々、関わってくださったみなさまのお力あってのことです。

思えばわたしの小説書きとしての最初の夢は、壮大な和風ファンタジーを書ききりたいというものでした。

拙くまとまとまらない設定をいじっては壊していた昔のわたしに、読んでくださったみなさまのおかげで、納得のいくお話ができたよと言いたいです。​

 

重ねてになりますが、お読みいただきありがとうございました。

 

この物語を、末永く楽しんでいただけますように。​​

2024年1月 奥乃桜子

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